中身の入った使えない冷蔵庫の事はもちろん分かっていた。
実家の電化製品はだいたいのものが長持ちする。
冷蔵庫もかれこれ20年は使っていたのではなかっただろうか。
さすがに壊れたようで、母からSOSが来たのは2年ほど前である。
本来ならば新しい冷蔵庫を購入し古い冷蔵庫を片付けて入れ替えるべきなのだが、実家の場合冷蔵庫を移動する動線が無かった。
搬入出来たのだから搬出も出来るはずなのだが、台所から出して居間を通って玄関に出すためには途中の床にある物を片付けなくてはならなかったのだ。
仕方がないのでその時は新しい冷蔵庫を購入し、玄関に置いた。
まだその頃母は台所を使って簡単な調理をしていたので、壊れた冷蔵庫の中身を出すのは母の役割だと私は心の中で思っていたのだった。
だが、わたしの考えは甘かった。
母は古い冷蔵庫の中身を片付ける気はなかったのだ。
最初のうちはまだ冷凍庫だけが壊れていただけだったので、コンセントも抜いていなかった。
たまに「冷蔵庫の中身どうした?」と聞いてみるのだが、母は「えへへ」と笑って誤魔化すのだった。
あれから2年、目の前にあるのは中身の入った
大型冷蔵庫。
コンセントを抜いたのはいつだったろう?
電気代がもったいない気がしてえいっと抜いたのだけは確かだ。
ヘルパーさんのおかげで冷蔵庫を運び出す動線は片付けられていた。
居間にある椅子を少し動かせば玄関から搬出は可能である。
台所の窓を開け、ゴム手袋をはめ、マスクを二重にして私はついに中身の片付けを開始した。
続きます。